中小企業の賃上げ、原資を確保するための現実的な選択肢
賃上げの必要性は、どの経営者も理解されています。人材が採れない、定着しない。その現実は日々の経営で痛感されているからです。それでも踏み切れないのは、原資の見通しが立たないからに尽きます。
今日は、賃上げの原資をどう作るかを、3つの方向から整理します。順番が大事なので、その点も含めてお話しします。
賃上げは「利益が出たら考えること」ではなく、「利益を出すために先に決めること」だと捉え直すと、打ち手の順番が変わります。
方向① 価格転嫁:まず取り戻す
最初に検討すべきは、やはり価格です。原材料費や労務費の上昇分が売価に反映できていなければ、どれだけ効率化しても賃上げの原資は生まれません。
取り組む順番としては、次のようになります。
- 取引先ごとの粗利率を洗い出し、低い順に並べる
- 直近1〜2年のコスト上昇分を、品目別に数字で整理する
- 粗利率の低い取引先から、根拠資料を持って交渉する
全社一律の値上げより、粗利率の低いところから個別にのほうが、実現可能性は高くなります。国も価格転嫁を後押しする施策を進めており、以前より交渉のしやすい環境になっています。
方向② 生産性向上:同じ人数で多くを生む
次が、一人あたりの付加価値を上げる取り組みです。ここで言う生産性向上は、「もっと頑張る」ではありません。やらないことを決めることです。
- 手作業の転記や二重入力をなくす
- 利益率の低い受注を、条件見直しか辞退にする
- 移動や待機の時間を、段取りの工夫で減らす
ここで生まれた余力を、そのまま賃上げの原資にできます。設備投資が必要な場合は、省力化投資や業務改善を対象とした補助制度の活用も検討の余地があります。
方向③ 助成金・税制:制度を取りこぼさない
3つ目が、公的制度の活用です。賃上げを行った企業を支援する税制上の措置や、生産性向上の取り組みと合わせた各種助成制度があります。
制度内容は毎年見直されますので、顧問税理士や社会保険労務士に、今年度の適用可否を必ず確認してください。「知らずに使っていなかった」というケースは、実際によくあります。
順番を間違えないこと
ここまでの3つは、①価格転嫁 → ②生産性向上 → ③制度活用、の順で検討するのが基本です。理由は明快で、①だけが売上そのものを増やすからです。
②と③は重要ですが、削減や還付には上限があります。価格を据え置いたまま②③だけで賃上げを続けようとすると、いずれ限界が来ます。
社員への伝え方も設計する
最後に一点。せっかく賃上げをしても、伝え方次第で効果が半減します。次の3つを、朝礼などの場で必ず伝えてください。
- なぜ今、賃上げをするのか
- その原資はどこから生まれたのか
- 来期以降、継続するために何が必要か
特に2つ目。「価格交渉を頑張った」「無駄をなくした」という背景が共有されると、賃上げが会社全体の成果として受け止められます。
おわりに
賃上げは、コストの増加ではなく、人材への投資です。ただし、投資として成立させるには原資の設計が要ります。順番を整理すれば、打ち手は必ず見つかります。
価格交渉の材料づくりから、ご一緒することもできます。