組織・人材 2026.04.28 by 呑海 賢次

「評価制度を入れたのに離職が増えた」よくある3つの失敗パターン

記事イメージ:「評価制度を入れたのに離職が増えた」よくある3つの失敗パターン

人事評価制度を整備したのに、かえって社員が辞めてしまった。中小企業の支援をしていると、こうしたご相談を年に何度かいただきます。制度そのものが間違っていたケースは、実はそれほど多くありません。つまずくのは、たいてい運用と説明の側です。

今日は、現場でよく見かける3つの失敗パターンと、それぞれの対処をご紹介します。導入前の会社にも、すでに運用中の会社にも当てはまる話です。

評価制度は「社員を格付けする仕組み」ではなく、「会社が何を大事にしているかを伝える仕組み」です。この前提が共有されていないと、どんなに精緻な制度も不信の材料になります。

失敗① 評価項目が多すぎて、何を頑張ればいいか分からない

他社の事例や書籍のひな形を参考にすると、評価項目が20も30も並んだ制度ができあがります。網羅性は高いのですが、社員から見ると「結局、何を優先すればいいのか」が分かりません。

結果として、評価は「上司の総合的な印象」に戻ってしまいます。制度を入れた意味がなくなるわけです。

対処はシンプルで、項目を5〜7個に絞ること。会社が本気で伸ばしたい行動だけを残します。「全部大事」は、「何も大事にしていない」と同じメッセージになってしまいます。

失敗② 評価はしたが、その理由が本人に伝わっていない

2つ目は、評価結果だけが通知されるパターンです。B評価という記号だけを受け取った社員は、「なぜAではないのか」「来期どうすればAになるのか」が分かりません。分からないまま処遇に差がつくと、不満は納得に変わらず蓄積します。

必要なのは、長い面談ではありません。15分でいいので、次の3点を口頭で伝えることです。

  • 今期、特に評価している行動を1つ(具体的な場面つきで)
  • もう一段上がるために期待する行動を1つ
  • そのために会社として支援できること

この3点が伝われば、評価は「裁定」ではなく「対話」になります。

失敗③ 制度を入れた目的が、社長の言葉で語られていない

3つ目が、最も見落とされがちです。制度の説明会で語られるのが、評価シートの記入方法だけになっているケース。社員からすれば、「管理を強めたいのだろう」と受け取られても仕方ありません。

導入時に社長が語るべきは、運用ルールではなく「なぜ今、これを入れるのか」です。たとえば──

  • 頑張っている人がきちんと報われる会社にしたい
  • 上司の好き嫌いで処遇が決まる状態をなくしたい
  • 次の幹部を、社内から育てられるようにしたい

目的が共有されていれば、初年度の運用が多少ぎこちなくても、社員は付き合ってくれます。逆に目的が不明なままだと、些細な不備がすべて不信の材料になります。

初年度は「処遇に反映しない」という選択もある

導入初年度は、評価はするけれど賃金には反映しない、という運用も現実的な選択肢です。会社側は運用を練習でき、社員側は基準を体感できます。2年目から反映すると決めておけば、試行期間であることも納得してもらいやすくなります。

おわりに

評価制度は、作った時点では半分しか完成していません。残りの半分は、運用しながら毎年少しずつ直していくものです。完璧な制度より、説明され続ける制度のほうが、結果的に定着します。

制度設計そのものより、社内への伝え方でお困りの場合も、お気軽にご相談ください。

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