DX人材がいない——は本当か?社内で育てる3ステップ
DXの相談を受けていて、必ずと言っていいほど出てくるのが「うちにはDX人材がいないので」という言葉です。気持ちはよく分かります。ただ、少し立ち止まって考えてみたいのは、その「DX人材」とは、いったいどんな人なのかということです。
私は前職でIT企業に17年おりましたが、システム開発ができる人がDXを推進できるかというと、必ずしもそうではありません。中小企業のDXで本当に必要な能力は、実は別のところにあります。
中小企業のDXに必要なのは、技術の専門家ではありません。自社の業務を誰よりも知っていて、面倒なことを面倒だと言える人です。
必要なのは3つの資質だけ
推進役に求められる資質を、あえて3つに絞るとこうなります。
- 業務を知っている:どこで手が止まるか、なぜその手順なのかを説明できる
- 面倒くさがり:同じ作業の繰り返しに疑問を持てる
- 人に聞ける:分からないことを、社外にも社内にも聞きに行ける
ITの知識は、この3つの後からで間に合います。逆に、ITに詳しくても業務を知らない人が旗を振ると、現場が使わないシステムができあがります。
ステップ① 「困っていること」を集める役をお願いする
最初にお願いするのは、ツール選定ではありません。現場の不便を集めることです。各部署を回って、「毎日やっていて、面倒だと感じる作業」を聞いて回ってもらいます。
ポイントは、解決策を考えさせないこと。この段階では、困りごとをできるだけ多く、生の言葉で集めることに集中します。20〜30個も集まれば十分です。
ステップ② 小さく1つ、自分で解決させる
集まった困りごとの中から、一番小さくて、一番身近なものを1つ選びます。「毎朝、3つのファイルを開いて数字を転記している」といったレベルで構いません。
これを、本人に解決してもらいます。表計算ソフトの関数でも、無料のクラウドサービスでも構いません。大事なのは、外注せず、自分の手で小さな成功を経験することです。
ここで「自分にもできる」という感覚が生まれます。この感覚こそが、DX人材への一番の入口です。
ステップ③ 社外の学びの場に出す
3つ目は、外に出すことです。社内だけで考えていると、どうしても発想が今のやり方の延長になります。
- 商工会議所やIT導入支援事業者のセミナー
- 中小企業大学校などの公的研修
- 同業他社や取引先の現場見学
ここでも重要なのは、送り出す前に「持ち帰ってきてほしいこと」を1つ決めておくことです。目的のない受講は、記憶に残りません。
経営者がやるべきこと
推進役を任命したら、経営者の仕事は3つです。
- 他業務を減らして、時間を確保する(これが一番大事です)
- 失敗しても責めないと明言する
- 月1回、進捗を聞く場を持つ
特に1つ目。通常業務を100%抱えたまま「DXもよろしく」では、どんな人材でも動けません。時間を渡すことが、任命することとセットです。
おわりに
DX人材は、採用市場で取り合うだけのものではありません。多くの中小企業では、社内にすでに候補がいます。その人に時間と経験を渡せるかどうかが、分かれ目になります。
誰を推進役にすべきか、といったご相談も承っています。