社員が辞める本当の理由は「退職面談」では聞けない
退職の申し出を受けたとき、多くの経営者が理由を尋ねます。返ってくるのは、「一身上の都合で」「家庭の事情で」「やりたいことが見つかって」。
そして、その言葉をそのまま受け取ってしまう。ここに、離職対策が空回りする原因があります。辞めると決めた人は、本当の理由を言いません。
退職面談で本音が出ないのは、相手が不誠実だからではありません。もう決めたことについて、波風を立てる意味がないからです。至極合理的な判断です。
なぜ本当の理由は語られないのか
理由は3つあります。
- 円満に辞めたい:業界内で顔を合わせる可能性がある。悪印象を残したくない
- 言っても変わらないと思っている:以前に言ったが、何も変わらなかった経験がある
- 理由が複合的:単一の原因ではなく、小さな不満の蓄積であることが多い
3つ目は特に重要です。決定打があって辞めるケースは、実はそれほど多くありません。小さな不満が積み重なり、あるとき臨界点を超える。だから本人にも、うまく説明できないのです。
辞める前に聞くしかない
結論はシンプルです。辞めると決まってから聞いても遅い。決める前に聞ける仕組みが要ります。
そのための現実的な方法を、3つご紹介します。
方法① 定例の1on1を、月1回30分
最も効果的なのは、これです。ポイントは、不定期ではなく定例にすること。
問題が起きたときだけ面談すると、呼ばれること自体が身構える理由になります。全員に定期的にやっていれば、話すことが日常になります。
聞くのは、次のような問いです。
- 今、一番時間を取られていることは何ですか
- 私が知らないことで、知っておいたほうがいいことはありますか
- この会社で、今後どうなっていきたいですか
方法② 匿名のアンケートを、年に1〜2回
1on1では言えないこともあります。特に、直属の上司に関する不満は、本人の前では出ません。
設問は10問以内に絞り、次のような項目を入れてください。
- 仕事の量は適切か
- 評価に納得しているか
- 相談したいときに、相談できる相手がいるか
- この会社を、知人に勧めたいと思うか
最後の項目が、総合的な指標として機能します。ここが低い部署は、要注意です。
実施したら、結果と対応を必ず公表してください。何も起きないと分かった時点で、次回から誰も本音を書きません。
方法③ 兆候を、数字で捉える
言葉にならない変化は、行動に表れます。次のような兆候に注意してください。
- 有給の取得パターンが変わった(平日単発の休みが増えた)
- 残業が急に減った、または急に増えた
- 会議での発言が減った
- 飲み会や社内行事への参加をやめた
これらは決定的な証拠ではありませんが、声をかけるきっかけにはなります。「最近どう?」の一言が、間に合うことがあります。
辞めた後に分かることもある
退職から半年ほど経った元社員に、改めて話を聞ける関係があれば、そこで本音が聞けることがあります。すでに利害関係がないためです。
送り出し方を丁寧にしておくと、こうした関係が残ります。再入社につながる可能性もありますし、辞めた人が顧客や取引先になることもあります。
おわりに
離職をゼロにすることはできません。ですが、防げたはずの離職は確実に存在します。その差を生むのは、日常的に話を聞く仕組みがあるかどうかです。
制度の設計から、聞き方の工夫まで、ご相談を承っています。