BCP(事業継続計画)、A4一枚から始める
BCP(事業継続計画)という言葉は、多くの経営者がご存じです。ただ、「作ってあります」と即答できる会社は多くありません。必要性は分かっているが、手をつけられていない。それが実情ではないでしょうか。
止まってしまう理由は、たいてい同じです。立派なものを作ろうとするからです。今日は、A4一枚から始める方法をご紹介します。
分厚い計画書は、いざというとき誰も開きません。必要なのは、非常時に机の引き出しから出して、そのまま使える一枚です。
A4一枚に書く6項目
まず、次の6項目だけを埋めてください。
① 緊急連絡先リスト
全社員の携帯番号、家族の連絡先。加えて、主要取引先、仕入先、金融機関、保険会社の連絡先。紙に印刷して、複数の場所に置いてください。停電中にクラウド上のデータは見られません。
② 安否確認の方法
誰が誰に連絡するか。連絡がつかないときの代替手段は何か。チャットツールの災害用グループを、事前に作っておくのも有効です。
③ 最優先で復旧する業務
すべてを同時には戻せません。止まると最も影響が大きい業務を3つ選び、優先順位をつけます。
④ その業務に必要な資源
設備、システム、データ、鍵を握る人。「これがないと動かない」ものを洗い出します。
⑤ 代替手段
工場が使えないときの代替生産先、事務所が使えないときの在宅対応、主要仕入先が止まったときの第二候補。
⑥ 当面の資金
売上が止まっても、支払いは発生します。1か月分の固定費がいくらで、手元資金で何か月もつかを書いておきます。
想定する事態は、まず2つでいい
あらゆる災害を想定すると、作業量が膨れ上がります。まずは、自社にとって現実的な2つに絞ってください。
- 地震・水害など、自然災害による物理的な被害
- システム障害・サイバー被害による、業務システムの停止
地域によっては、水害のリスクが地震より高い場合もあります。自治体のハザードマップで、自社所在地を確認してください。これは今日中にできます。
作った後にやること
一枚が完成したら、次の3つを実施します。
- 配る:全社員に紙で配布し、自宅にも1部保管してもらう
- 試す:年に一度、安否確認の連絡だけでも実際に流してみる
- 直す:人の入れ替わりや取引先の変更に合わせて、年1回更新する
特に2つ目。訓練していない手順は、本番で機能しません。連絡が回るかどうかを試すだけなら、30分で終わります。
取引先からの要請にも応えられる
近年、大手企業が取引先にBCPの策定状況を確認する動きが広がっています。サプライチェーン全体の強靭化が求められているためです。
一枚でも策定していれば、この問いに答えられます。取引継続や新規取引の条件になる場合もありますので、営業面でも意味があります。
公的な支援も活用できる
事業継続力強化計画の認定制度など、中小企業のBCP策定を後押しする公的な枠組みがあります。認定を受けると、金融・税制上の優遇や、補助金の加点措置につながる場合があります。
制度内容は年度により変わりますので、商工会議所や自治体の窓口で最新情報をご確認ください。
おわりに
BCPは、災害に備える計画であると同時に、自社の弱点を洗い出す作業でもあります。「これがないと止まる」を把握することは、平時の経営にも役立ちます。
A4一枚なら、今週末に着手できます。まずはそこから。