専門家派遣制度、初めて使うときの進め方
「専門家に見てもらいたいけれど、顧問料を払う余裕はない」──中小企業から、よくいただく声です。そんなときに検討していただきたいのが、公的機関が実施している専門家派遣制度です。
低額の自己負担、あるいは無料で、中小企業診断士などの専門家を自社に招くことができます。ただ、制度の存在は知っていても使ったことがない、という会社が非常に多いのも実情です。今日は、初めて使うときの進め方を整理します。
窓口相談との一番の違いは、専門家が自社に来て、現場を見たうえで話ができることです。同じ相談でも、現場を見てからでは中身が変わります。
どこが実施しているか
実施主体は複数あり、地域によって呼び名も内容も異なります。代表的なところでは──
- 都道府県・市区町村(産業振興課、産業振興財団など)
- 商工会議所・商工会
- 中小企業基盤整備機構
- 金融機関や信用保証協会が関与する枠組み
まずは、お住まいの自治体の産業振興担当か、地元の商工会議所に問い合わせるのが確実です。「専門家を派遣してもらえる制度はありますか」と聞けば、案内してもらえます。
申込みから終了までの流れ
制度により差はありますが、おおむね次のような流れになります。
- ① 窓口に相談し、制度の説明を受ける
- ② 申請書に、現状の課題と支援してほしい内容を記入する
- ③ 事務局が、課題に合う専門家を選定・打診する
- ④ 初回訪問(現状把握と、支援計画のすり合わせ)
- ⑤ 2回目以降の訪問(実際の課題解決)
- ⑥ 報告書の提出、アンケート
申込みから初回訪問までは、数週間かかることが一般的です。急ぎの案件には向きませんので、余裕を持って動いてください。
申請書の書き方が、支援の質を決める
ここが一番のポイントです。申請書の「課題」欄の書き方で、選ばれる専門家も、支援の中身も変わります。
避けたいのは、「経営全般について助言してほしい」といった漠然とした書き方です。かわりに、次の3点を具体的に書いてください。
- 今、何が起きているか(事実。できれば数字つきで)
- どうなりたいか(支援終了時の状態)
- すでに試したことと、うまくいかなかった理由
3つ目が書いてあると、専門家は同じ提案を繰り返さずに済みます。限られた訪問回数を有効に使えます。
回数が限られていることを前提に組み立てる
多くの制度では、年間の派遣回数に上限があります。3回、5回といった枠内で成果を出すには、事前の設計が要ります。
- 1回目:現状把握と課題の絞り込み(宿題を出してもらう)
- 2〜3回目:具体的な打ち手の設計と、社内での実行
- 最終回:定着の仕組みづくりと、その後の進め方の確認
初回訪問の冒頭で、「最終回までにこの状態にしたい」と専門家に伝えておくと、逆算した組み立てになります。
社内の受け入れ体制も準備する
意外と見落とされるのが、社内側の準備です。次の3点を整えておくと、効果が大きく変わります。
- 担当者を決める(社長一人で抱えない)
- 訪問日を、あらかじめ全部押さえておく
- 依頼した資料は、訪問前に用意しておく
相性が合わないと感じたら
専門家にも得意分野があり、相性もあります。合わないと感じたら、遠慮せず事務局に相談してください。専門家の交代に対応してくれる制度もあります。我慢して回数を消費するのが、一番もったいない使い方です。
おわりに
専門家派遣は、費用対効果の高い制度です。うまく使えば、顧問契約の前に「どんな支援が自社に合うか」を試すこともできます。まずは窓口に問い合わせるところから始めてみてください。
当事務所も、複数の公的機関で専門家・アドバイザーとして活動しています。使い方のご相談も歓迎です。